頭痛について
「国際頭痛分類(ICHD)」に記されたようにさまざまな頭痛があります。開業してから「頭痛専門医」として多くの頭痛の患者さんに接してきました。一般的な頭痛は以下のように「片頭痛」、「緊張型頭痛」があります。その他「群発頭痛」が患者さんは多くはありませんが有名です。また、原因がよくわからない分類困難な頭痛も結構あります。
当院では、頭痛の患者様にも、漢方、ハーブ、サプリなどの補完代替医療を積極的に提供しています。
一方、注射薬(抗CGRP関連製剤:エムガルティ、アジョビ、アイモビーグ)は数人に使っているだけです。注射薬をご希望の方は他の脳外科、神経内科、頭痛専門医を受診して下さい。
片頭痛
心臓の鼓動に一致した拍動性の頭痛が、典型的には片側性におこります。階段昇降などの動作で痛みが増強し、光をまぶしく感じたり、音や匂いに敏感になるので、部屋を暗くして横になって痛みに耐えている方もいます。また、吐き気も通常は伴います。頭痛の前に左右どちらかの視野にキラキラやギザギザの光や視野の欠損が生じることがあります。これは、閃稀性暗点といって比較的よく起こる前兆です。脳梗塞などの重篤な疾患を意味するのではありません。
頭痛発作を止めるにはトリプタン系の薬が奏功します。5種類の薬が発売されていますがそれぞれに特徴があります。最近(2022年)レイボー(ラミスジタン)が発売されました。頭痛が起こってしまってからでも効果があると言われています。しかし、めまいの副作用が多いような印象です。
頭痛の発作頻度が高い場合はむしろ予防的治療が必要となります。種々の薬がありますので専門医を受診してください。また、頭痛予防として注射薬が最近つかえるようになりましたが、当院では積極的に使っていません。多数例の経験がある他院を受診して下さい。
「肩こりから頭痛が起こる」ということで、患者さんもお医者さんも「緊張性頭痛」と思っていることが割りとあります。でも、診察してみるとはっきりした「片頭痛」のことが多いようです。診断が間違うと、治療もまちがいます。やはり専門医の受診をおすすめします。
緊張型頭痛
いわゆる肩こり、ストレスから来る頭痛で、誰もが1回は経験したことがあるタイプの頭痛です。多くは両側性で、締め付けられるような痛みです。吐き気が生じることはあまりありません。寝込んでしまうようなことも少ないです。したがって、頭痛があっても仕事ができるので我慢して過ごされる方がほとんどです。
しかし、慢性的になると、頭がさえず、仕事の能率が上がらず、生活の質を落としてしまいます。緊張型頭痛といえども市販薬に頼らずに専門的医受診をおすすめします。通常の痛み止め、抗うつ剤、抗不安剤、筋弛緩剤、運動指導、などが有効です。漢方もよく効きますし、鍼治療は肩こりに有効なことからわかるようにこのタイプの頭痛にはよく効きます。
肩こりが強いと「後頭神経痛」が起こることがあります。左右どちらか片方の後頭部の刺すような痛みが周期的に起こります。皮膚の神経の刺激症状なので重篤な病気ではありません。肩こりを良くすると同時に神経痛も良くなることが多いです。
顔面におこる痛みは「三叉神経痛」があります。片側の顔面に刺すような痛みがおこります。咀嚼や触るなどの刺激で誘発されます。肩こりとは関係なく、テグレトールが有効です。場合によっては脳外科の手術が必要になることもあります。
群発頭痛
目の奥をうがつような激しい頭痛が夜間から早朝に起こります。眼には涙が出て、鼻は鼻水がでます。痛みは激しく”居ても立っても居られない”状態になります。そのような発作が一月ほどにわたりほぼ毎日起こります。痛みが激しいので患者様はたいてい医療機関を受診されます。しかし、わりと珍しい頭痛なので正確な診断がされないことがあります。
発作を止めるは片頭痛の薬が効くことがありますが、薬に対する反応が悪いことも多いです。したがって、発作が起こらないようにする予防的治療も大切です。慢性化した群発頭痛は治療困難となります。専門医受診をお勧めします。
薬物乱用頭痛
頭痛を治すための薬剤で頭痛がひどくなることがあります。もともと頭痛がある人で頭痛薬を月10~15日以上、3か月以上使用すると難治性の慢性頭痛に移行することがあります。頭痛は片頭痛に似ていますが、吐き気、不安、無気力などを伴いやすく生活の質が大幅に障害されます。
治療としては、原因となった頭痛薬をやめることが一番ですがなかなか困難なことが多いです。まず、最初から薬物乱用頭痛にならないように適切に頭痛薬を使うことが大事です。このタイプの頭痛に対しては西洋薬が頭痛の原因となっているので、西洋薬をやめるために漢方薬は有用です。また、鍼治療も原因となっている頭痛薬から離脱するために有効です。
”分類困難”な頭痛
「国際頭痛分類」に従えば、原則、全ての頭痛は分類可能です。しかし、「ーー頭痛」と分類してそのカテゴリーにあったスタンダードな治療を行っても、よくならないことがわりとあります。なぜなら、分類と治療は別だからです。また、頭痛に名前をつけても、その元となる原因、病因を不問にしているからです。一番簡単な例は「緊張型頭痛」で、「肩こり」があるとして、その原因を不問にしているから、筋弛緩剤のみでは効きません。
肩こりの原因としては、例えば、職場のパワハラ、スマホで目の使いすぎ、肉の食べ過ぎ、腰痛からの波及、赤ちゃんの抱っこなど、本当にたくさんの原因があります。それを不問にして肩こりが良くなるわけがなく、同時に頭痛が良くなりません。体質や生活態度、環境などから原因・病因を解きほぐして治療につなげるのが医師の仕事だと思います。筋弛緩剤や鎮痛剤を処方するだけなら、ドラッグストアで買えるくすりでも十分です。
その点、東洋医学など別の視点で頭痛をみると、新たな治療方法がわかることがあります。当院では統合医療の観点から多方面から頭痛を治療しています。
”急”を要する頭痛
今まで経験したことのないような激しい頭痛が突然起こった場合、特に意識障害や麻痺を伴うときには急を要します。くも膜下出血、脳出血、重度の外傷、脳腫瘍、などがあります。救急の脳外科病院を受診して下さい。当院では救急対応できません。